俺の隣

著:n.t


PM11:00


俺は毎日 この時間に 君の元へ帰る ――――――――










もう、皆が眠りについているこの時間、俺は君に会う為、既に俺の帰る場所となったマンションのエレベーターに乗り込む。

エレベーターの中で、速まる鼓動。

……早く会いたい。

その鼓動を抑えつつ、エレベーターから降り、ドアの前へと向かう。
ポケットの中から、この部屋の鍵を出してドアを開け、中に入る。

この時、俺は君の名前を呼ぶ。
君には聞こえていないかもしれない。   でも、俺は君の名前を呼ぶ。
……ただ、君が愛しいだけ。



靴を脱ぎ、奥へ進むと、テレビがつけっぱなしで、梛はソファでうたた寝をしていた。
そうして、俺の帰りを待っている。
「梛」
名前を呼ぶと、梛は俺に気づいて起きる。
眠そうにしながらも、俺を視界に入れて微笑む。
ほら、

「おかえり」


それだよ、
  俺の幸せ



俺の姿を見つけると、安心したように俺に微笑みかけ、俺のそばに来る。

「ただいま」

俺はそれがとてつもなく好きで、キュッと抱きしめ、この想いをこめて、返事をする。
片手を梛の頭の上にのせ、そこに顎をのせる。
梛は………どこか嬉しそうだ。

「…梛、いつも待ってくれてるのは嬉しいけど、眠くないか?」
「大丈夫。仁が帰るの待ってるの、好きだもん」
その言葉に、思わず俺も微笑む。

「そっか。でも、ほどほどにしろよ?次の日キツイし」
「うん。 あ、仁、お風呂は? 今、はいれるよ」
「ん。じゃ、はいってくる。 梛、先に寝てろ。眠いだろ」
「はーい」
名残惜しいが、仕方なく腕を離す。
つけっぱなしだったテレビを消して、寝室へ向かう梛の背中を見送り、俺は風呂へ急ぐ。






――――――――――



事を終え、サッパリした俺に、眠気が襲ってくる。
寝室に向かう途中、足の裏から伝う廊下の冷たさが、ほてった体に沁みてちょうど良い。

ドアを開ければ、ベッドは丸く膨らんでいる。梛が丸まって寝ていた。
俺が入るスペースはちゃんとある(笑
そのスペースに入り込んで、ゴロンと横になる。そのとき、空気が入ったのか、梛は暖かいモノに寄り添い、服を掴んできた。
俺は、梛の背中に腕をまわしてそっと抱きしめる。











ひらり、

と、ゆっくりと雪の降る中、俺たちは出会った。

君は「寒いね…」といって、さくっと音を立てて俺に寄り添い、服を掴む。
その手を握って、俺の頬につけて、「暖かい」といえば、君はほほえんだ。

俺って、付き合い始めこんなにも想ってた…?
そのころの好きというのが膨れ上がって、君が愛しい。
これまでに沢山ぶつかった事もあったけど、こんなにも安心して隣にいられるのも、君のおかげ。

今、俺の隣には君がいる。
これからも、ここにいてくれるだろうか……。
俺は離れる気などない。

とりあえず、想ってるだけじゃ何もならないから。俺の気持ちを伝えよう。
後で、君の気持ちも伝えてほしい。




愛してる


こんな俺でも、

君は、いつまでも俺の隣で笑っていてくれますか…?

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