エム氏の論文教室
今回「正しい論文の書き方」というテーマでコラムを書くことになった文学部教授のエムだ。世界各国のあらゆる文学に精通し、「言葉の天才」とまで言われた私の知識をここで疲労するのはもったいないような気もするが、それなりにいい報酬も出ることだし、仕方なく書くことにする。
くだらん前置きはこれくらいにして本題に入ろう。作文を書く上でもっとも注意すべきことは五時・脱字である。自分の名前を書き間違えるような馬鹿者はよもやいないだろうが、議式を儀式と書いたり、回相を回想と書いたりするのはよくあるミスだ。これらのミスをなくすためには書く際に最新の注意を払うのはもちろんのこと、完成後に何度も更正をすることが不可欠である。たった一つの五時が論文試験の命取りとなってしまうこともある。
しかし安心してほしい。もしも論文中に五時があったとしても、論文の内容次第で汚名挽回のチャンスはいくらでもある。いくら形式が大事とはいっても、論文の命はやはり内容である。五時や脱字などの細かいミスは、しっかりとした論拠と独創的な主張で名誉返上してしまえばいい。
また、普段から新聞やテレビのニュースをこまめにチェックしておくことも大切だ。いかに素晴らしい文章の書き手であっても、文章のもととなる情報がなければ内容のある論文は書けない。あまりに情報収集に夢中になりすぎて、学生の本分である勉強に手がつかないということになっては困るが。
論文試験は試験管との闘いである。諸君の中には論文試験を間近に控え、試験管という見えない敵に怯えているものもいるだろう。だが、恐れることはない。論文にしっかりとした主張とそれを支える論拠があれば、論文試験で失敗することはまずないであろう。五時や脱字に気をつけるだけでも、試験管への印象はかなり違う、くれぐれも言うが。五時脱字は論文試験の命取りなのだ、
諸君に伝えたいことはまだまだたくさんあるが、枚数制限の都合でそろそろ結びに入らなければならない。最後に、諸君に心からエイルを送りたい。論文試験を突破すればその後の人生の大きな地震となるだろう。
諸君の拳闘を祈っている。
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