儚
「ねぇ、裕くん」
私達、何を何処で間違えちゃったのかな――――
聞こえない声、開かない瞳、閉ざされた心。
全てが全て、この私。
「裕くん、裕くん」
何度だって呼んであげる。
大好きな、大好きな裕くんの名前なら。
「なんで眠ってるの?起きてよ」
残っているわずかな力で腕を動かし、
脳から手に指令をだす。
『裕くんの肩を掴んで、揺らしなさい』
これが私の生き方。
私にはこう生きるしかない。
「起きてよ、起きて・・・・起きてってば、起きてってば!」
ついに私は裕くんの頬を叩いちゃった。
わざとじゃない。
わざとじゃない。
ちょっと、カッとなただけ。
責任なんて無い。
私にあるのは空っぽの心だけ。
「――――裕くんも死んじゃうんだね」
人間は儚い。
すぐに死んでしまう。
どれだけ愛しくても
どれだけ哀しくても
最後は皆、死んでしまう。
でも、裕くんは
裕くんだけは違うと思っていた。
ま、結局は死んでしまったけどね。
私が刺したから。
愛しすぎて、狂っちゃったのかどうか分からないけど、刺しちゃったの。
包丁で一回だけね?
そしたら裕くんから紅色の液体が出てきたの。
私、血なんて見たことなくて
後で紅色の液体が血だって分かったんだ。
「裕くーん、起きて、起きて、起きてよぉ・・・・・」
なんでだろう、
涙がぽろぽろって溢れてくる。
私が刺したのに。
ワタシがサシタのに。
ワタシガサシタノニ。
ワタシガサシタ・・・・・・?
そう
私が刺したんだ。
可愛くて、格好良くて、素敵で、王子様みたいな裕君を
私が刺したんだ。
「裕くん、ごめんね、裕くん、ごめんね、裕くん・・・・・・・・」
気がつけば世界はくるって一回転してて
私の胸には包丁が刺さってた。
「あ・・・・・れ・・・・・・なんで・・・・・?」
息が出来ない。
苦しい。
苦しいよ、裕くん。
「ゆ・・・・・・・・くん・・・・」
裕くんの上に倒れる私。
裕くんもこんな気分だったのかな。
私、裕くんと同じところ行けるかな?
行けたなら、また、裕くんと一緒に―――――――
fin...?
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