White

著:琴音

漆黒の空に白い吐息を見ると彼女を思い出す
「白い吐息を見たら私を思い出してね」
そういった彼女は
もういない


去年の丁度今ごろだった
冬が訪れようとしている10月の暮れ
俺は真っ白な部屋にいた
横たわる彼女
彼女の身体についている痛々しい点滴や器具の数々
そう、ここは彼女の病室だった

9月の卒業式、彼女は突然倒れた

彼女は
末期の
白血病だった

今、目の前のいる彼女は白く透き通っていた
彼女は薄く笑い両親に何か話している

今度はゆっくり振り向き微笑んでいた
「白い吐息を見たら私を思い出してね」
一生懸命うなづいて見せた俺を見て彼女は
息を引き取った

去年の夏俺は幸せだった
彼女と行った夏祭り
今年の夏も一緒に行くつもりだった
夢を話してやるつもりだった
夢を聞いてやるつもりだった

そして

漆黒の空を見上げる

空の果てにいるはずの彼女に話しかけてみた
「なぁ、思い出したぞ、約束守ったぞ」
俺の目からは止まる事のない涙が流れていった

白く美しい彼女が好きだった
優しく、いつまでもそばにいてくれるような気がした
白い吐息のような彼女の笑顔が俺の頭から離れない

漆黒の空の下
走って、走って、走って
その場所から離れた


「白い吐息を見たら私を思い出してね」
そういった彼女は
もういない・・・・・・

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