ひだりてに眼球、みぎてに舌

著:影子

ずるずると、ずるずると、
私の 中身 を引き出して。
叫ぶには楽しすぎて
笑うには痛すぎる。

誰も彼もが恐かったから、開いてみた。
本の表紙を開いて、中を見るように、
開いたらわかると思ったんだ。
でも、どれもこれも同じで、
赤くて、濡れてて、臭かった。
大好きな人も、大嫌いな人も
開いてみたら、同じだったんだ。

そしたらまた恐くなった。
みんなぜんぶ一緒なら、一体なにが、違うの。

私はみんなでみんなは私で
じゃあ私が出来ることはみんなが出来て
私の生きている意味はどこにもないんじゃないのかないんじゃないのかないんじゃないのかないんじゃないのかないんじゃないのかないんじゃないのかないんじゃないのかないんじゃないのかないんじゃないのかないんじゃないのかないんじゃないのかないんじゃないのか?

その上みんな同じような髪で、服で、化粧で、
外から見ても、わからなくなる。


だから私を開けてみた。


みんなと私はどこも変わってなかったけど、
私には目印ができた。
目がなくて、舌もなくて、
ああこれなら私がどこに行ってもしまっても
私は私を見つけることができるんだって。
心から安心した。そしたら

目玉のなくなった眼窩から、
ぽろりと、涙が流れた。

この作品への感想は、影子氏まで、メールでお願いします。


戻る