テディクリスマス
白い息が宙に舞い、温もりがよりいっそう感じられる「冬」
の小さな物語―――
チャラッチャ〜♪
このメロディはあいつからのメールだ。少し、いやな予感がする。
「ごめん。今日いけない。;;ごめんな、本当。。。理由は後で説明するから」
携帯に出る小さなデジタル文字。
そんな……この日は、クリスマスくらいは一緒に居られるって想ってたのに……。
やっぱりもう終わりなのかな。メールだって電話だって最近は控えめ。
新鮮じゃなくなったとか?
私はこんなに必死なのにね。私だけか……。
そう思ってため息をつくとスカートから出た足が
急に寒くなった。
周りの幸せそうなカップル、綺麗なイルミネーション、おいしそうなスイーツ、
全てがうらめしくなって、家に帰る足を早める。
これから一人で家に帰って、寂しいクリスマスか―わざとさめた笑みを
浮かべる。
マフラーに顔をうずめて歩いていると、ギターの音と
歌声が聞こえてきた。
近づくと、新しそうなギターを持つ、20歳前後の男が見えた。
長袖一枚にジーンズ。スポーツブランドの帽子。
立ち止まって聞いてみると、結構上手いのが分かる。
曲の感じは優しくて、割合高い音が多い。
歌詩は恋がメインみたいで、
「君に照らされてるから僕は光っていられる」と聞き取れる。
なんか、心地いいな、この人の歌声――。
いらだった気分が少しだけ静かになった。
側にあったベンチに座ったときに、曲は終わった。
―もう歌わないのかな?
また悲しい気持ちにおそわれそうになる。
「聞いてくれてありがとう」急に話し掛けられて驚く。
「あ、はい。なんか優しい歌ですね」
戸惑ってありきたりな感想しか述べられない私。
「ありがと。友達と一緒に作ったんだよね」
笑うと八重歯がのぞいた。
かわいい人――
「君さぁ、待ち合わせしてるの?ここで」
「いえ……彼氏にドタキャンされちゃって。もう最悪〜って感じ……ですよぉ」
情けなく笑う私を
カレは長いまつげが目立つ目で見つめる。
「そっか……じゃぁ、早く元気が出るように、プレゼント!」
そう言って小さい袋を私のかばんに入れた。
「えっ?いや、いいですよ!」
「もらって?俺が持ってるより君が持ってたほうがお互い幸せな気がする」
不思議そうな顔をした私にカレは笑いかけて、
「あははっ意味わかんないよな、俺」
「……プッ!……ありがとう。もらっておくね」
気持ちが楽しくなって晴れていくのが分かる。
「人は人の輝きで進むんだよ。きっとね……じゃ、俺そろそろ行くね、元気で」
ギターをケースに入れて、カレは立ち上がる。
「さようなら」
―ありがとう、元気をくれて。私は心の中でつぶやいた。
「メリークリスマス!!」
カレはそう言って向こうにかけていく。
私はカレを静かに見送って、それから袋を開けてみた。
「うわぁ……かわいい……」中からは小さなクマが出てきた。
赤いリボンを首に巻いていて、ささやかな微笑みが目立つ。
クマを手にのせて、しばらく眺めていると、手に冷たいものがふってきた。
白い……雪。
そのとき、携帯電話がなった。
幸せを知らせる電話が私を呼ぶ。
チャラッチャ〜♪
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