時を止まらせることができたら。
ねぇおじちゃんは、時を止まらせることができたら何をするの?
そう振り返りながら私に聞いたのは、10代前半の若い少年だった。
君なら何をするんだ?
僕ならねぇ・・・。考えてないなw
といって、とても笑顔で少年は答えた。
時を止めることができたらあなたなら何をするだろうか?
私の時は動いても、好きな人の時が止まったら・・・。
・・・ねぇ。君は時を止めたい?
おじちゃんさっきから質問ばっかだよ。
自分でも考えなきゃだめだよ。
そうだな・・・。
若い子にいわれちゃだめだめなおじちゃんだな(苦笑)
そういうと少年は笑顔で私の目を捉えていた。
私は・・・。君を助けたい・・・。
目の前に広がる光景、ボールを追いかけ道路に飛び出した少年
スローモーションのように少年の動きを捉える私の目。
そして動き出す私の足・・・。
それがおじちゃんの望み?
少年は少し首をかしげ相変わらず笑顔で私の目を捉えている。
心なしか、言葉をゆっくりと丁寧にいっているように感じた。
それが・・・私の・・・。
私は、少しうつむき胸に手を当てて考えてみた。
私には最愛の人がいる、少年を助けるという事は、死というリスクを伴う・・・。
正直怖い。でもそれは私が亡くなることよりも、後に残す者達を思うから。
死ねない・・・私は・・・あの人のためにいきたいから・・・。
少年は少し寂しそうに、それでも笑っていった。
うん。わかった。
おじちゃんありがとう。
目を閉じていて。
そういうと少年は私の手をはじいた。
突如世界が動き出した。
私は少年に言われたとおり目を閉じた。
聞こえてきたのは、急ブレーキの音と鈍い音
誰かかけてくる・・・。
あなた、大丈夫ですか!返事をしてください!
・・・誰?
うっすらと目を開けた。
そこは、さきほどの交差点、
車の急ブレーキのタイヤの焦げ後・・・
私は、手を差し伸べたポーズで交差点の中央に立っていた。
・・・
少年・・・
少年は!?
私はいきなり叫んだ。
そして目の前に横たわる少年にかけよった。
何度も呼びかけたが、彼の意識は戻らなかった。
私は・・・。この少年を死なせてしまったのか?
涙があふれてきた、私の無力さに・・・。
そうしている内に、悲しみに暮れる私の混濁とした意識はまた
暗闇に吸い込まれていき。
当たりにはうるさいサイレンの音が近づいていた。
翌日聞いた話だが、
少年は、その場で亡くなっていた・・・。
即死だったらしい。
なぜ、少年は私にありがとうといったのだろう。
私は、救えなかったのに・・・。
事件がおこってから一週間
私は、後悔の念にさいなまれ続けていた。
私は、彼を見殺しに・・・。
そんなとき、私はサービス期間中で無料の占いをやっている行列を見かけて並んだ。
どうせ今何をやっても手につかないし・・・。
ただ、誰かに話を聞いて貰いたかった・・・。
私の順番が回ってきた、
ねぇあなたはどう思いますか?
そう私に尋ねてきたのは、若い占い師だった。
あなたは本当は何が望みなの?
あなたの気持ちが整理できなければ占っても何もうまれないよ・・・。
・・・。
占い師は疲れているのか声が少し荒っぽかったが、
ただということもあってか後ろにはまだたくさんの人がならんでいた。
私は、少年を見殺しにした・・・。
・・・ねぇあなたは。
なせか占い師はくすっと笑った。
そしてはっきりとこういった、
それがあなたの望みなら仕方ないんだよ。
私は、最愛の人がいる場所の帰り道、占い師との会話を思い出していた。
それがあなたの望みなら仕方ないんだよ。
亡くなった少年もまた、あなたのために亡くなったのだ。
あなたは、少年の命を背負ってるんだ。
それは、重枷としてではなく、あなたを真っ直ぐ歩かせるためのね。
占い師は、そう言ったらはい次々と私を追い払った。
私は・・・
まだ真っ直ぐ歩けない・・・けど・・・。
おかえり。
そういって、家に着いた私を最愛の人が迎えてくれた。
最愛の人の笑顔が見たいから、それだけのために・・・いや、
それだけで私は生きていけると、私に気づかせてくれた少年に感謝し、
最愛な人がいるこの世界をまた歩き出すことにした。
そうそう、あれから考えてみたんだが
もし私が時を止まらせることできたら、
私は私自身の時も止まらせてしまうだろう、だって・・・
私の望みは最愛の人と一緒に時を刻む事なのだからね・・・。
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