兼業はヴィザード!?

著:ジン太


      〜双子の仕事はヴィザードです!?〜
                                                                   作 ジン太


「うわああああ。」
細い路地に悲鳴が響く。
「た、頼む、見逃してくれ〜。ひいいいい〜。」
男の抵抗も虚しく、路地の壁には血が吹いた・・・。

〜平日の事件〜                
五月晴れの続く青い空。
そして、桜が散り、花びらだらけの並木道。
ここに1人の少年と、1人の少女がそろって歩いている。
「ふああ〜、暇だな〜。」
今日で12回めの欠伸し、雲ひとつない、真っ青の空を見上げながら少年がつぶやいた。
この少年は赤坂 恭介。長めの髪で、薄茶色っぽい色をしている。
「どうしたの?今日に限って欠伸ばっか。っていつもか・・・」
きれいな細長い髪の毛をしている少女が恭介の見上げているほうを不思議そうに見ながらいった。
彼女は赤坂 千夏。彼女も薄茶色っぽい髪をしている。
「・・・別に・・・・。」
何でそんなことを、わざわざ聞くのかが、こっちには不思議だった。
「恭介ってさ、時々何考えてるかよくわかんないよね。」
「・・・うるさい!!」
お前もそうだと言いたかったが、こういうことになると、千夏はすぐにムキになるので、時間の無駄だと思い、言うのをやめた。
この2人は双子だった。顔もそっくりだった。2人とも母親似だった。男の恭介には、少し迷惑だった。しかし性格は間逆だった。
恭介はいつも静かで、クール感じだ。人とはまったくといって良いほど関係を持ってなかった。A型で几帳面なタイプだ。
千夏はいつも元気で活発な感じで、10年間かけて恭介を従わせた。O型で大雑把なタイプだ。

恭介はかばんを振り回しながら、見飽きた空をもう1度見上げた。
彼のかばんの中はいつも空っぽだった。しかしもう片方の腕には細長い筒のようなものを持っている。
これこそ『快刀 乱麻』(かいとう らんま)、恭介の武器だ。                 
武器といっても、普通、生物は切れない。これは、この世の中に発生する存在、・・・いや、[汚染]と呼ばれる物体を倒すときに使う武器だ。
、これとよく似た武器を、千夏も持っている。千夏の武器は、『快杖 切破』(かいとう せっぱ)、これも恭介と同様の能力を持っている。
名前はよく似ているが、見た目は全然違った。
恭介の持っている武器を、乱麻と、簡単に呼んでいる。これは日本刀によく似た形で、一般人には日本刀にしか見えないだろう。
でも、実際は違った。これはある職業の人々が、特別に使う武器である。
そして恭介のような武器を持つ人を、専門用語で「剣士」と呼ぶ。乱麻は、汚染に対して、物理的な攻撃を与える。
千夏が使っている武器は、まあ簡単に、切破と呼ぶ。これは、絵本の魔法使いが使うような、先っぽが丸まっている背丈ほどもある杖だ。
これは、ある特定の字呪文を唱えれば、その字呪文に応じた術が出る、ファンタジーな武器だ。字呪文とは口から‘言霊‘の力を使いこの世の中にいる、‘精霊‘の力を借り、奇跡の技、「術」、を発動させる。
1つは地精、地面の中に、無数に存在している。2つ目は、空精、いわば大気の中に無数に飛び散りまわっている。
しかし、字呪文を使うのにも限度がある。それは、個人の精神力に関係してくる。
ちなみに、千夏は多くて10回の術が可能だ。 まあ恭介は軽く20回は行くだろう。
精霊とは、大きく分けて2種類が存在している。
そしてこの武器の1つ1つに合性があり、その合性にピッタリあって、初めて武器として使えるようになる。
そして、本当に心が通い合ったとき、『特別能力』が生まれる。しかしこの能力は、まれにしか起きない、これをものにすると、天才と呼ばれるくらい凄いのだ。

汚染とは、人の負の感情や、殺意などの結合体のことを、汚染と呼んでいる。
一般人にはこんなに日本刀みたいな武器を普通に持っていたら、普通に銃刀法違反になってしまう。
そのため、布か何かで隠すのが普通だ。
なぜ、彼らはこんな常識はずれのものを持っているかというと、彼らは簡単に言えば、[汚染]の破壊、そして、[汚染]が広がらないよう、[除去]するのが仕事だからだ。
もちろん仕事なのだから除去士総合組織連合会から給料はもらえる。
千夏は、お金のことになると目の色が変わる。しかし、恭介は、お金などあっても、なくても、あまり変わらないもののようにあつかっている。
そのため給料の割り振りは、千夏が9割、恭介が1割程度である。しかし働いている量は恭介のほうが2倍以上ある。
なぜかと言うと、いつも千夏はめんどくさい仕事は、全て恭介に押し付けてきた。
恭介が昔、1度だけ反抗すると、千夏は「昨日は遅くまで練習をしていたから!!」(何の練習だよ!?)など、「君と違って友達多いから・・・。」など、時々、恭介が気にしていることをうまく使い、結局そのときはあえなく惨敗してしまった。
それからは、もう、しかたないか・・・という気持ちで、言われた事を素直にやってきた。
この仕事をしているのが、 汚染の破壊・除去士 通称、‘‘除去士‘‘と呼ばれる人たちだ。
除去士には4つの階級がある。
1つは、「下級・除去士」
主に1丁目〜3丁目など、狭い地域担当で、そこで起きた[汚染]を破壊・除去をする人達で、新人や、能力が低い人などがこの階級だ。
2つ目は、「中級・除去士」
主に市や郡など,大きめ地域の担当だ。これになるためには【中級試験】を合格しなければなれない。
この階級になったら下級・除去士の1.5〜2倍程度の給料がもらえる。
3つ目「上級・除去士」
この階級を、‘副 家長‘と呼ばれている。
これは県の担当だ。これには、【上級試験】の他に、【実技】と、【面接】がある。
これに合格すれば、中級の3〜5倍の給料がもらえ、その他に仕事の分担などを任せられる。
そして4つ目は「最上級・除去士」
この階級を‘家長‘と呼ばれている。
これは1つの国に2〜3人しかいない。日本は3人だ。
1人は、80代の藤崎。
1人は、60代の佐藤。
そして、最後の1人は30代の山代。
山代は、つい最近家長になったばかりで、新人だが、働きっぷりはダントツで1番だ。
この組織のことを、・除去士総合組織連合会・、いわゆる除去士の‘家‘だ。
そのため除去士からは、「第2の家」、通称「2の家」。と呼ばれている。
もちろん、この組織は、世界中にあり、海外でも、たくさんの除去士がいる。

そして、恭介や、千夏も除去士総合組織連合会の正式登録されている。階級はもちろん下級・除去士で、まだ除去士になってから3ヶ月しかたっていない。
「さーて、今日もいっちょ、やろうか!!」
千夏は気軽な声でそういうと、バッグから、四角い箱を出した。中身はもう恭介にはわかっていた。
箱を開けると、ノートぐらいの厚さをしたわけのわからない文字が円の周りをグルッと巻いて書いてある、魔法使いが使いそうな感じの紙だった。
千夏はそれを地面に置き、手を添え、ぼそぼそとなにかを呟いた。
「地表に巡りし光の網よ・・・・・、あれ?なんだっけ?」
千夏がぼけたような顔をした。
恭介は、ため息をつきながら、呪文の続きを教えた。
「・・・・・・・汚染を示し方向に我を導き、力の大きさを円に示したまえ。我は汝の力を借り、汚染を消滅させたい。」
この呪文は、‘精霊‘の力を借り汚染の場所を探るための字呪文だ。
呪文の続きを言い終えた瞬間、円がぼうっと光り始めた。
するとその光は空中へふわふわと浮かび、地上10bらへんまであがったと思ったら、2方向に飛び散ってしまった。
「・・・ふうっ。まあそれほどでかい汚染は無いな・・・」
光の濃さや、距離などから考えて、2,3分歩いたところにある森と、逆方向にある小学校付近にそれぞれ小さな汚染があった。
「恭介って、いつもクールな感じだけど、結構しっかりしてるのね。」
光が散った方向を遠目で見ながら言った。
「・・・馬鹿にしてんのか?」
恭介が舌打ちをしながらいった。
「まあまあ気にしないの!さあ、汚染を削除しに行きましょう!!」
明るい声で、千夏が言いながら、早足で森のほうへ走っていった。
「やれやれ・・・。」
恭介もふうっとため息をつきながらと付いていくことにした・・・。

しばらく歩いたら、杖をついた80代ぐらいのお爺さんが話しにきた。
「おやおや、「澱み」を消しにいくのかね。」
腰を低くしながら、よぼよぼ声で言った。
「よどみ??」
千夏や恭平は除去士の勉強はあまりしてないので「澱み」の意味を知らなかった。
「ああっ。今は・・・「汚染」と、呼ぶのかな。」
千夏のやや後ろ目にいる、恭介は、今の会話から、推測ではあるが、昔、汚染のことを、澱みというらしい。
そもそも、除去士の歴史1,000年も前の、ある1人の少女からはじまった。
噂ではあるが、その少女は、《澱み(汚染)を見える目》通称、澱眼(だくがん)と呼ばれる目を持った特別な存在だった。
そのため差別をひどくされていた。しかし、ある侍が彼女の言葉を信じ、彼女が目になり、侍が腕となり、世の中の澱みを消していった。
そして、その子孫には、澱眼の能力が付いてくる。そのため、どんどん除去士が増え、今では除去士の団体(除去士総合組織連合会)ができているぐらいに広がった。
今では世界中のいたるところに、その組織が存在する。
「なんで、専用の道具もなしに汚染・・・っと、よ、よどみ・・・でしたっけ・・・?」
千夏が舌をかみそうになりながらいった。
なぜ、汚染を澱みと呼ぶのに、そんなにかむのだろう?と、恭介は思った。
そういえば、千夏は1度覚えたことを、なかなか忘れない。なので、すぐ昔のことを持ってくる。
しかし勉強は別物だった。理由は今も教えてくれないままである。

「汚染でいいですよ。」
優しそうな声でお爺さんが言った。
「えっと・・・じゃあ、なんで汚染の位置がわかるの。・・ですか?」
千夏は敬語とタメ口が混ざりながら、言った。
「長年の勘ですよ。勘。」
頭をこんこんと叩きながら笑ってお爺さんは言った。
「へえ〜、すごいですね。」
千夏はとても感心した表情で手をパチパチとさせ、目をキラキラとさせていた。
これには、ちょっと不満を感じた。
「・・・・・本当に長年の勘でわかるのか・・・?」
ブツブツと呟いていると、お爺さんは、もう自分のすぐ横を歩いていた。
「おほほほっほ。それじゃぁの〜。」
お爺さんは手を振りながら歩いていった。その後姿に何かぞくっとするものを感じたが、勘違いだと思って、すたすたと千夏の後についていいった。
「・・・ふん。あの汚染をね・・・・・ほっほっほっほっほ。」
薄気味悪い笑みを浮かべながらトコトコと歩いていった。

森に着くと、あたりは薄暗くなっていた。
「おい。汚染の場所は?」
恭介は肘で千夏をこついた。
「あ・・・うん。 ちょっと待って・・・。」
ガサゴソとバックの中をあさった。
「あ!あった!。」
中から先ほどとは模様の違う、今度は円の中に三角の模様が書いてあるか紙を取り出した。しかしちょっとくしゃくしゃだった。
「・・・・・・・な、何よその目は!!ずっとかばんに入れてたんだから仕方ないでしょ!!」
ならもっと丁寧に扱えよ・・・。と心の中で思い、ため息をつきながら、疑い深い目で言った。
「・・・呪文のは覚えて・・・。」
「覚えてるわよ!!」
千夏が怒った。疑われるのは仕方ないだろ・・・呟きながら、はい、はいと頷いた。
「えっと・・・、地表に巡りし光の網よ・・・1里から2里までにある、汚染の位置をここに示せ!!」
あたりには何にも変化がなかった。
「・・・・あ、あれ?なんで?字呪文は完璧よ!?」
おろおろとあせりながら、なんで、なんでを繰り返していた。
「・・・ったく・・。こんな初級呪文も・・・。」
「うるさいわね!!!!」
恭介の言葉をさえぎり、顔を真っ赤にしながら、千夏は言った。
「杖貸せ・・・。」
「っちぇ、結局恭介がやんのか。」
ブーブー言いながら半分、よかった〜という気持ちに、千夏はなっていた。
「・・・・・・・お前に任せると、1年あっても終わんない。」
そう言うと、す〜っと深呼吸をした。
「表に巡りし光の網よ5里から17里までにある、汚染の位置をここに示せ・・・。」
千夏はああっ!成る程と、手をポンッと叩いた。
通称、字呪文では、1里のことを5b程度の範囲のことを示す。もちろん広い森で15bは半分もない。
そのため、千夏の字呪文は成功しなかった。
「・・・あっちか。」
千夏が、「そのくらい知っててわよ!」とぎゃーぎゃー唸ってるのを無視し、恭介の視界は、紙のほうを見ていた。
先ほどとは違い、今度は光の道のようなものができ、またふっと消えた。
「行くか・・。」
今度は、恭介が先頭を行く。こんな仕事さっさと終わらせて家で、「火曜サスペンス劇場」を見なければ。
しかし、こんな軽い気持ちは、この後、激しく壊されてしまうということになることとは、まるで予測できなかっただろう・・・。

汚染を消すには、まず原因を探らなくては、倒しても倒してもきりがない。
そのため不審なところを探し回った恭介たちは、ふっと、小さな汚染を見つけた。
汚染はさまざまな形をしている。犬、鳥、etc・・・。そして今日は犬のような大きさで、背中には小さな羽根が生えている。これは、この辺の負の感情が関係してくるだろう。
しかし大きさが大きさなので、さささっと逃げていった。
「あ!追わなきゃ!! きゃあああ!」
千夏はあわてて追おうとした。しかし、恭介に襟をつかまれ、こけそうになった。
「ななななな、なにするのよ!!あたしがこんなことで死んだら、一生恨むからね!!」
まだ襟をつかまれたまま、じたばたした。
「安心しろ・・・。こんなことで死なれちゃったら、世界わもっと静かだし、何より俺が苦労しない・・。」
「なななな、なんですって〜!!もう許さないわよ〜!・・・ちょ、ちょっと襟はなしなさいよ。男なら正々堂々と・・・」
「うるさい。」
千夏の言葉をさえぎり、軽く後頭部を叩いた。
千夏はそのまま、ぐたっとなった。
「・・・・これで火曜サスペンス劇場が見れる・・・。」
すたたたたっと原因を探りに行った・・・。
「きょ、恭介め〜。がくっ。」
千夏は大の字になってばたっと倒れた。

鳥の鳴く声が聞こえる。もう10分以上歩いているが、一向に原因はわかっていない。
「ったく。この辺なんだけどな・・・・。・・・ん?」
肩ほどまである雑草をかきわけながら、きょろきょろと辺りを見ていた恭介に、ある光景が目に映った。
「・・・・おいおい、あれってまずいんじゃないの?」
そこに居たのは先ほどの汚染が、先ほどより3倍以上の大きさになっていた。ざっと見て4b以上もあった。そして今もどんどん大きくなっていた。
「ちっ!!」
走りながら、恭介は腕にある細長い筒のようなものをほどいた。すると乱麻が出てきた。
「乱麻!前方の対象を汚染と認識!!一気にいくぞ!」
ほどいた乱麻を一気に振り上げ、汚染の急所、頭を狙った。
しかし、汚染は紙一重で攻撃をよけ、しゃがんだ状態から腕で恭介をふっとばした。恭介は、受け身も取れずに、まともに地面に叩きつけられた。
「ぐはっ!!」
口の中が鉄くさい。どうやら吐血をしたようだ。恭介は一旦引こうとした。しかし立ち上がった瞬間、汚染はもう目の前まで来ていた。
あわてて後ろによけたが、4bもある巨体を、よけれずそのまま上に乗ってきた。100`ほどある重さに、骨が悲鳴を上げている。
「・・・・・おやおや、誰かと思ったら、あなたでしたか。」
聞き覚えがある、よぼよぼ声がした。
「あんただったのか・・・。」
恭介の目線の先には、先ほどの爺さんがいた。
「まったく、とんだ邪魔をしてくれたな。」
下目で見ながら、不気味な笑いをしている。そして、そのまま恭介の肩を蹴った。
「ったく、ふざけんじゃねー。なんでおまえが・・・。うっ!!」
ボキリと骨が折れた音がした。痛みの方向からどうやら左腕を折ったらしい。
「理由?そんなもんないんじゃよ。」
また汚染の力が強くなった。どうやら、爺さんが出している、その負の感情をどんどんすって、力が大きくなったようだ。
「ただなんとなく、世の中がつまらなくなったんじゃ。」
フンと笑いながら爺さんが言った。するとグググっと力が強くなった。早くこの爺さんを止めなくては、そう思い、必死に案を考えた。
しかし、普段からあまり考え事をしない恭介には、全然思いつかなかった。
「さて、そろそろ死ね!!」
汚染の力が1段と強くなった。もうだめだなと、恭介は人事のように考えた。しかし、遠くで声がした。
「あ〜ら、さすがの恭介も超ピンチ〜って感じ。」
木の上に腕を組んだ少女が立っていた。
「さっきはよくもなぐったわね・・・・まあ、食事当番1週間で許してあげる。」
そう言うと、トウっと木から降りた、・・・いや落ちたというほうがいいかもしれない。
千夏は足を押さえながら、涙目になっていた。
「っつ、きょ、恭介、助けて〜。足がジ〜〜〜〜〜ンとする〜ぅ。」
今自分が置かれてる状況を理解していないのか、涙目でこちらを見ている。
・・・・・・・・・・・・・・・・しばらく沈黙が続いた。
「・・・さあ〜気を取り直していくわよ!!。」
やっと痺れから開放されたのか、元気を取り戻していた。
「いくわよ〜。・・・大気に巡りし精霊たちよ、塊、焔と化し、対象を粉砕、消滅!!」
すると、千夏の頭上から、火の玉が5つほど出てきた。そして2,3秒後ババババババッと勢い良く汚染へ、向かって言った。
「いっけ〜!!」
1発目はよけられたものの、残りはきれいにすべて当たった。
汚染は、勢いよくふっとんだ。
「おお〜!!ホームラン!」
千夏が数10メートル先を見ながら、うれしそうに言った。恭介は左腕を抑えながら、ふらっと立ち上がった。
「ななななんじゃ〜!?わしの汚染が〜!??」
爺さんがおぞましい声を出した。しかし、汚染はほとんどダメージはなかった。
「・・やっぱり、剣で攻撃しないと・・・。」
たまたま2人の顔が見合った。汚染はうなりながらこちらに向かってくる。
「・・・・久しぶりに、協力する?」
「・・・ああ。」
「よっしゃ!攻撃は任せたわよ!」
2人で汚染に視線を向けた。
まずは汚染が攻撃を仕掛けた。恭介は一気にジャンプし、そのまま汚染の後ろに回った。
「はあああっ!!」
汚染が振り向く前に、思いっきり背中を叩き切った。これには、汚染も悲鳴を上げた。
「よっしゃ!」
千夏がガッツポーズをしたが、恭介は、まだ乱麻を構えていた。
「・・・いや、まだだ。」
さっと、恭介のほうを振り向き、口から炎を吐き出した。
「うげええええ!」
千夏はびっくりしていた。当たり前だ。汚染が火を吐くなんて聞いたことも、見たこともない。
恭介はある程度の予想外の展開は予測していた。が、さすがに炎は予測できなかった。だが、何とか、恭介の反射神経をフルに使いギリギリよけれた。
「ふう〜。あぶな〜。」
先ほどから、歓声を上げているだけで、その場から1歩も動いていない。
しかし、そんなことを言ったらまた、「今からやる気だったのよ!!」みたいなことを言うに違いない。そう思い、無視しながらまた戦闘を始めた。
しかし、自分の体の4倍以上もある敵を倒すのは、ややつらかった。
昔は父に「山で修行だ!」といいながら、登山2時間で遭難し、生死を彷徨ったことがある。そのため、熊なんかは、何度も戦ったことがある。
あの時みたいに楽に倒せたら、いいが、こんな敵1人ではまず無理だ。
・・・1人では・・・
ふっと千夏のほうを見た。協力すると言っておきながら、自分はまったくといって良いほど動いていない。
そのとき恭介は叫んだ。
「おい!千夏!さっさと手伝え!」
「!な!なんですって〜!あんたねえ〜」
恭介の態度に驚きながら千夏も怒鳴った。
「うっせ〜!早く手伝えよ!!」
「い、今からやろうと思ってたわよ!!」
こういうのも昔1度だけあったな〜。と思った。
あの時は惨敗したが、今は勝ち負けを気にしている暇はない。
「しゃべってないでさっさと・・・!くっ!!!」
言い合いをしているうちに、汚染は一気に攻めてきた。
今度は腹をえぐられた。
「・・・ごはっ!!」
恭介はその場に血を激しく吐きながら倒れた。
「恭介〜!!!」
千夏は泣き叫んだ。
「わかったわよ!やればいいんでしょ!大気を巡りししぇきょせうヴいれいふひいじゃがあが」
涙で何を言っているのかわからなかったが、何とか術は発動した。
しかし術の大きさは千夏の精神力ではありえない量の、火の玉が出てきた。
「いっけ〜!!」
涙で周りが見えてないのか、火の玉はあらゆる方向に飛んでいった。しかし、それが逆に、逃げ場が無くなり汚染はだいぶダメージを受けたようだ。
「え?え?え?」
やっと周りが見えるようになった千夏は呆然とした。なんと、汚染が、ふらふらになっていた。
「え?な、なにがあったの??」
やっと立ち上がった恭介に千夏は聞いた。
「よくやった・・・。後は俺に任せろ・・。」
そういうと、乱麻をっぎゅっと持ち汚染の目の前まで来た。
「じゃあな・・・。俺をここまで、てこずらせたのは、お前と、千夏がこけて泣いたときに、泣き止ませるくらい大変だった思い出だけだ・・・。」
ふっと笑いながら、汚染を切った。
激しい音と共に汚染は消えていった。汚染は2の家で解体されるだろうな、と関係のない感想を持ちながら、その場に座り込んだ。
あの時、千夏が出した火の玉は、きっと、切破との『特別能力』により生まれた、力だったのは、だいぶ後にわかった。その理由は、恭介の傷を癒すのに、
いつもの2倍は早く完治した。地夏はまだ気が付いていないようだが、恭介には少しだけうらやましかった。
「・・・さて、そこの爺さんのことだけど・・・。」
爺さんは、なぜ・・、なんであの汚染が・・、とブツブツと呟いていた。
「千夏、よろしくな・・・。」
そう言うと、恭介はスースーと眠ってしまった。
「まったくもう・・・。おじさんごめんね。あなたは多分、2の家で記憶を消されるかもしれないけど・・・。まあがんばって。」
そういうと、切破を爺さんに向けた。
「・・・大気を巡りし精霊たちよ・・・。対象を2の家に飛ばしたまえ・・・。」
そういうと、爺さんの姿はふっと消えた。
ちなみに、爺さんの正体は、元、除去士で、あんまりにも仕事をしないので、首にされたのだ。その憂さ晴らしにこのような事件を起こしたのだった。
よっこらしょっと、恭介を担ぎ、重い!重すぎる!と思いながらも、がんばって家まで引きずった。
「まったく、いきなり切れたと思ったら、急に子供みたいに眠っちゃって・・・。」
ハアハアと息を切らしながら、千夏は言った。
「・・・・でもかっこよかった・・・。」
そう言うと千夏もねっころがった。
なんか忘れてないか?と思いながらも、まあいいか・・・、と千夏も眠りに入った。
もちろん、学校の汚染を頬ってほって置いて、給料が減給したのは、誰も知らなかった・・・。


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