こっくりさん
こっくりさん
「こっくりさんは、いるの!迷信なんかじゃない!」
夢の声が教室中に響いた。
「いるわけないでしょ。あんなの、迷信よ。」
冷静に桜が言う。
「ちょっと・・・」
と、白が夢と桜の間に割り込んだ。
「何で喧嘩をしてるの?」
「こっくりさんのこと。」
と、桜は答えて、夢のほうをチラッっと見ながら、言った。
「今夜、やってみましょう。白ちゃんもね。」
白はとりあえずうなずいた。
―夜―
夢が用意したのだろう。ロウソクと、十円玉と、紙が夜の学校の机に並べてあった。
「こっくりさんが来たら、絶対に十円玉から手を離さないでね。」
夢が注意した。
「こっくりさん、こっくりさん・・・」
夢がこっくりさんを呼び始めた。
10秒・・・20秒・・・30秒・・・
十円玉は動かない。
「ほーら、やっぱりね。こっくりさんって、やっぱりめい・・・」
桜が後の言葉を飲み込んだ。
十円玉が動き出したのだ。まるで、生き物のように。夢、桜、白の指は、十円玉が
動いたときに離れそうになったのだが、三人とも、なんとか指をくっつけた。
「こっくりさんは本当にいるんだよ!桜ちゃんも、これで信じたよね?こっくりさん、
そうでしょ?」
十円玉は文字が書いてある紙の上を滑った。
「は」「い」
「こ、こんなの、自己暗示よ。」
桜はこっくりさんを信じようとしなかった。十円玉がまた、紙の上を滑った。
「し」「ん」「じ」「る」「ほ」「う」「が」「い」「い」「よ」
「・・・信じるほうがいいよ。桜ちゃん、こっくりさんの言うとおりだよ。」
夢はどうしても桜にこっくりさんを信じさせたかった。
「こっくりさん、こっくりさん。あなたは本当のこっくりさんなんですか?」
桜が聞いた。夢は、内心、ガッツポーズをしていた。桜がこっくりさんを信じたと
思ったのだ。
「は」「い」
十円玉が紙の上を滑って、こっくりさんは本物だ。と知らせた。
「じゃあ、もちろん証拠を見せてくれるよね?」
桜が意地悪な笑顔でこっくりさんに聞いたとたん、夢と白は真っ青になった。
こっくりさんは霊なのだ。何をするか分からない―
「い」「い」「よ」
桜の顔が真っ青になった。夢が誤る。
「ごめんなさい、こっくりさん。」
「い」「や」
白が聞いた。
「こっくりさん、どうしたらお帰りになってくれるんですか?」
「や」「る」
「・・・やる?」
桜が不思議そうに言った。十円玉はまた滑り出した。
「か」「く」「れ」「ん」「ぼ」
「こっくりさんはかくれんぼをやりたいの?」
夢が聞いたが、こっくりさんの乗り移っている十円玉はそれを無視して、滑った。
「わ」「た」「し」「が」「お」「に」
「私が鬼。つまり、私達は隠れて、こっくりさんが鬼なのね。」
「つ」「か」「ま「え」「た」「ら」
「捕まえたら・・・?」
桜が言った。
「た」「べ」「ち」「や」「う」「よ」
「た・・・食べちゃうよ!?」
夢が驚いて十円玉から指をはなしたので、桜と白はもう十円玉を指で押さえる必要が
なくなった。そのとき、
ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ・・・
窓の方、窓の外で音がした。何かが上っているようだ。窓にはカーテンがかかっていた。
白は、カーテンを開けた。そこには、1つ目小僧と手手手手手手手手手手―
ではなく、6、7歳ぐらいの女の子がくっついていた。赤の花柄の着物を着て、
髪は肩下ぐらいまである。クリクリした可愛い目が白、桜、夢という順番で
三人を見ていた。
「お姉ちゃん。」
女の子が喋った。なぜか、三人の頭の奥で聞こえた。三人はここが学校の4階で
女の子がどうやって登ってきてたか。ということは気にしなかった。
「私の名前はね、アキネっていうの。こっくりさんなんだよ。」
女の子の言葉に三人は凍りついた。
「お姉ちゃんたち、あそぼぉ〜!」
「逃げよう!」
白の言葉が引き金になって、夢と桜は白と一緒に教室のドアの方へ走った。
「か、硬い!」
ドアを開けようとした桜は声を上げた。
「ちょ、ちょっと・・・夢ちゃん、白ちゃん、手伝って!」
桜と夢と白の三人がかりでもドアは開かなかった。まるで、何百年も使っていないよう
だった。アキネは窓の鍵を開けようと努力していたが、鍵はなかなか開かない。
「あっ!」
夢が小さな叫び声をもらした。
「何?」
白が聞くと夢は嬉しそうに言った。
「ロッカー」
その一言で白と桜は笑顔になった。
「夢って頭いい〜!」
教室にはいくつもロッカーがある。そのうちの一つは外に出る近道のロッカーなのだ。
そのロッカーは、普通に開けると近道でもなんでもないのだが、3回ノックして、
「近道、近道。」
と言うと、滑り台が出てくる。それを滑ると、外に出れるのだ。
ガチャッ!
窓の鍵が開いて、アキネが入ってきた。
「はやく、私は最後に滑る。」
桜が言った。白、夢という順番で二人は滑り降りた。桜が滑り降りようとしたとたんに、
女の子の手が桜の背中に触れた。
「みぃつけたぁ〜!」
夢は滑っている途中で
バリッ!ゴキゴキッ!
と、いう音と、桜の叫び声を聞いた。
夢と白は夢中で家に帰った。
白の家では、不気味な音が響いていた。
グチャッ!べチャッ!
白は勇気を出して音が聞こえる方へ行ってみた。向こうに顔を向けているが、背中の輪郭、
服の模様で白はそれが妹の黒だと、知った。
「また、なにか工作でもするの?」
安心した白は黒に聞いた。黒は、ゴミ箱からペットボトルなどを漁って、それらを工作して、新しいものを作るのが得意なのだ。
黒は振り返った。そして、ニタァ〜と笑って言った。アキネの顔だった。
「みぃつけたぁ〜!」
そして、白の首にかぶりついた。白のはく息がだんだん弱くなった。
も・・・なにも・・・わか・・・ない・・・
一方、夢は安心していた。
部屋に鍵をかけたし、窓には、おまじないがしてある。しかし、夢の対策は甘かった。
「おーい、夢?ちょっと入れてくれよ!」
夢の兄の現の声がした。夢がドアを開けるとそこにいたのは夢の兄ではなかった。
赤い花柄の着物、肩下ぐらいまで伸びている髪、クリクリした可愛い目。
そう、あのアキネだった。
「あそぼぉ〜!」
ゴキッ!グチャッ!
夢の体からアキネは顔を上げて、言った。
「あそんでよぉ〜。それにね、こっくりさんは本当にいるんだよぉ。こっくりこっくりこっくりこっくり
こっくりこっくりこっくりこっくりこっくりこっくり・・・あははははははははははははははは・・・」
翌日のニュースは三人のことだった。
「一人は学校で死亡、二人はそれぞれの家で死んだと見られます。三人の名前は桜ちゃん、夢ちゃん、白ちゃんです。なお・・・」
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