気が付いたら此処にいた。

著:並木夕子

気が付いたら、此処にいた。
僕の学校の屋上。

「……え?」

何をしようとしているんだ?僕は……。
真下は、地面。コンクリート。
何故か僕はフェンスの外側に片足を出していた。

「なっ……」

驚きのあまり僕は声を出す。
足を急いでフェンスの中に入れた。
……今の状況を整理しよう。


僕は草野太一。ふと気が付いたら此処にいた。
真下は地面。落ちたら助からないだろう。
そして、僕は落ちようとしていた……。

「自殺未遂か?」

何で?どうして……。
自殺しようなんて一度も思ったことは無い。というか、何でこんな所に……。

校庭に陸上部がいることからして、放課後か……?
下のほうから女子の声が聞こえる。



「……そうか」

僕は生きる事に疑問を感じていたんだ。
所詮生きていたってイイことはないし、世の中は犯罪で溢れている。腐っている。
僕一人ぐらいいなくなったって……。

いや、でも僕がいなくなったからって何になる?世の中は犯罪で溢れるだけ。家族は悲しむ。
一番の親友、勇太ともっとやりたい事だってある。
死んだからってイイ事があるはずない。

よかった、後一歩で僕は死んでいた。




屋上を去ろうと振り向きかけたその時だった。

―ドン―

鈍い音がした。
その瞬間僕は思いっきり空をとんだ。
地面の方に落ちていく。
一瞬、頭が白くなる。
僕は誰かに押されて、屋上から地面に落ちていく……のか?
何故!?僕を突き落としたのは誰……


屋上から誰かが呟くのが聞こえた。


「あと少しで俺の手を汚さずに死んでくれたのに」


勇太の声……!?



「ゆう……っ」

あっという間だった。
思いっきり頭を打つ僕。意識が薄れていく。目がかすむ。

最後に見たのは、屋上から消える勇太の影だった。

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