空の色

著:いあや


 ある所に、お金持ちの男の子がいました。

 ある日男の子は、友達の女の子を自分の部屋に招きました。
 ここが、僕の部屋。すごいでしょ?これ、全部僕一人で集めたんだ。

 女の子は驚いて声もでません。
 それもそのはずで、驚かない人の方が少ないでしょう。
 男の子の部屋には、たくさんの『空の色』の絵の具があったのですから。
 白と間違えてしまいそうな水色から、黒い絵の具として使えてしまいそうな色まで。
 たくさんありました。

 それらは、高い天井につきそうな程高くていくつもある大きな棚に、全ての色が見えるようにと工夫して絵の具が立てかけられていたのです。
 男の子は得意気に言います。
 誰にも手伝わせないで僕一人で棚に並べたんだ。それに、ここに無い『空』は無いんだ。

 女の子は、男の子の話を聞いていない様で一生懸命に棚に目を向けています。
 男の子が不思議そうに見ていると、女の子はしばらくして言いました。
 この『空』の中にはあたしの『空』は無いね。

 にっこりと笑います。

 男の子は、ぽかんとして動けないようでした。口が中途半端に開いています。
 あたしの『空』はこんなにたくさんはいらないんだ。ただ、あの『空』ひとつでいいの。

 女の子は両手を胸にあて、何か思い出すような仕草をして言いました。
 男の子はにっこりと笑っている女の子に何も言えませんでした。
 でも、女の子の笑顔に頭に来る事はありませんでした。
 そのうち、女の子は帰って行ってしまいました。

 女の子が帰っても、しばらく。男の子は自分の集めた『空』を眺めて見ていました。
 とても、自分一人で集めたとは思えない『空』の数でした。
 白から黒まで。自分が今までに見てきた色全部です。
 男の子は、棚の中から自分が一番『空の色』ではないと見る度に思っていた『空』を取り出してみました。
 自分で見てきたくせに…。変な色。
 
 言って、男の子は、手に持っていた以外の『空』を全て捨ててしまいました。
 
 

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